位置エネルギーとは
位置エネルギーはエネルギーのうち、その位置によって定まるエネルギーのことをいいます。
そのため基準点という、位置エネルギーが0になるような点を設けることができます。
さてそんな位置エネルギーですが、ポテンシャルエネルギーと呼ぶ方が多いかもしれません。
英語では「potential energy」と書くので直訳したというのは想像にがたくありませんが、ではなぜ「位置エネルギー」なのかこの記事では考えてみましょう。
まずは力学的エネルギー保存の法則を導出する
まずは力学的エネルギー保存則を導出します。
スタートは運動方程式です。
$$m\frac{d^2 x}{dt^2}=f(x)$$
両辺に速度\(\frac{dx}{dt}\)をかけて、時刻\(t\)で積分する。
$$\int_{t_1}^{t_2}m\frac{dx}{dt}\frac{d^2 x}{dt^2}dt=\int_{t_1}^{t_2}f\frac{dx}{dt}dt$$
左辺と右辺の積分をそれぞれ考えてみましょう。
まずは左辺
まずは左辺について。
積分は微分の逆演算ですから、
\begin{align}
\frac{d}{dt}\left[\frac{m}{2}\left\{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2\right\}\right]&=\frac{m}{2}\cdot\left\{2\left(\frac{dx}{dt}\right)\right\}\cdot\frac{d}{dt}\left(\frac{dx}{dt}\right)\\
&=m\frac{dx}{dt}\frac {d^2 x}{dt^2}
\end{align}
であることに注意すると
\begin{align}
\int_{t_1}^{t_2}m\frac{dx}{dt}\frac{d^2 x}{dt^2}dt &=\left[\frac{m}{2}\left(\frac{dx}{dt}\right)^2\right]_{t_1}^{t_2}\\
&=\frac{m}{2}\left(\frac{dx(t_2)}{dt}\right)^2-\frac{m}{2}\left(\frac{dx(t_1)}{dt}\right)\\
&=\frac{m}{2}v^2(t_2)-\frac{m}{2}v^2(t_1)
\end{align}
次に右辺 最初に変数変換をする
この手の積分は高校の時に習った置換積分の形である。
\(t\rightarrow x\)と変数変換すると
$$\int_{t_1}^{t_2}f\frac{dx}{dt}dt=\int_{x_1}^{x_2}fdx$$
シンプルな形になりました。
\(f(x)\)であることに注意してください。
位置によって決まるから位置エネルギー
さきほどの積分について考えます。
$$\int_{t_1}^{t_2}f\frac{dx}{dt}dt=\int_{x_1}^{x_2}fdx$$
この積分は結局位置によって結果が決まります。
原始関数を\(-U(x)\)としてみましょう。(これについては別記事で説明します。)
すると
$$ \int_{x_1}^{x_2}fdx=U(x_1)-U(x_2)$$
よって
$$(右辺)=U(x_1)-U(x_2)$$
これより
\begin{align}
\int_{t_1}^{t_2}m\frac{dx}{dt}\frac{d^2 x}{dt^2}dt=\int_{t_1}^{t_2}f\frac{dx}{dt}dt\\
\longleftrightarrow \frac{m}{2}\{v(x_2)\}^2-\frac{m}{2}\{v(t_1)\}=U(x_1)-U(x_2)\\
\end{align}
こうして運動エネルギーを\(T_1,T_2\)と置くと見慣れた力学的エネルギーの保存則
$$T_1+U_1=T_2+U_2$$
が導かれます。
重力による位置エネルギー(地表付近で有効)
「位置エネルギー」と聞くと思い浮かべるのがこの「重力による位置エネルギー」でしょう。
このときの位置エネルギー\(U(X)\)は、基準点からの高さを\(h\)とすると
$$U(x)=mgh$$
などと書くことが出来ます。
バネの位置エネルギー
位置によって決まる位置エネルギー。
ほかにもバネの位置エネルギーも存在します。
バネ定数\(k\)のバネの端に質量\(m\)の質点を固定し、(自然長から)\(x\)だけ縮めたとします。するとことのときの位置エネルギーは
$$U(x)=\frac{1}{2}kx$$
となります。
ここでは\(x\)だけ縮めましたが、伸ばす場合も同様な結果になります。
バネにも位置エネルギーがあるんだ
と最初は思うかもしれません。
でも先ほどの重力による位置エネルギーのようなイメージで考えると納得できるのではないでしょうか。
重力による位置エネルギーは、ある高さから落下させると運動エネルギーを生み出せる。
バネの位置エネルギーは、自然長から伸び・縮みさせた状態から解放させると運動エネルギーが生み出せる。
あくまでイメージですが、いかがでしょう。
万有引力による位置エネルギー
もう1つ位置エネルギーの例を出しましょう。
それは万有引力による位置エネルギーです。
重力による位置エネルギーはあくまでも地表付近でのみ使うことが出来る形式です。
そのため宇宙空間なんかではこちらの万有引力による位置エネルギーを採用する必要があります。
地球の周りを回る人工衛星を考えてみましょう。
地球の質量を\(M\)、人工衛星の質量を\(m\)、それらの距離を\(r\)、万有引力定数を\(G\)とすると、万有引力による位置エネルギーは
$$U(x)=-\frac{GmM}{r}$$
となります。バネよりもわかりにくいですね。
これもイメージとして考えると
宇宙空間で、2つの質点を距離を隔てて静止させた状態で置いたとします。
この時点で万有引力による位置エネルギーは発生しています。
そこから解放することで、お互いに引き合い、近づいていきます。このときに運動エネルギーが生じるのですね。
*あくまでイメージなので「宇宙空間に静止させて置く」については深く言及してません。
どうやってあの位置エネルギーを求めたのか
簡単な場合なら高校物理の内容で位置エネルギーの具体系は求まりますが、より一般的な求め方としてはもう少し難しい方法を使います。
それは別記事で説明するとします。
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